毒性試験とは

 食品添加物の安全性評価のために必要な毒性試験は、「食品添加物指定の食品衛生調査会調査・審議基準」のなかに示されています。毒性試験は通常マウス、ラット、イヌなどの実験動物を使用し、いろいろな毒性を調べるための実験がなされます。
 実験動物に一度に大量の食品添加物を飼料に混ぜて与えた時に現れる影響を調べる急性毒性試験、食品添加物を一生涯の長時間にわたり飼料に混ぜて毎日与えた時の影響を調べる慢性毒性試験が行われます。
 一般に動物の胎児は妊娠から出産までの期間にいろいろな影響を受けやすいので、食品添加物による影響を調べる催奇形性試験や、動物に食品添加物を長期間与え、その間に交配させて、妊娠能力が維持されているか、分娩、哺育や新生児の発育の状態などについて調べる繁殖試験も行われます。特に食品添加物の場合には2世代以上にわたる試験を行い影響のないことを確かめます。
 また遺伝毒性や発がん性の可能性を調べるために変異原性試験が行われます。変異原性試験は遺伝毒性や発がん性検討の予備試験です。最終的には実験動物のほぼ全生涯にわたり食品添加物を投与して発がん性試験が行われます。
 このほか、摂取された食品添加物が体内でどのような経路で体外に排せつされるか、体内での吸収、分布、代謝なども確かめられます。
 その他の毒性試験としてアレルギー反応を起こさないかを確かめる“抗原性試験”や、中枢神経系や自律神経系に及ぼす影響や、消化酵素の活性を阻害し、実験動物の成長を妨げる性質の有無を調べる“一般薬理試験”が行われることもあります。
 毒性試験は試験する物質にどのような毒性があるのかを調べるために高濃度で行わますが、実験動物への投与量は飼料の栄養バランスをくずし栄養障害の影響を与えない最高5%を限度として投与されます。これは一般的に加工食品を通して摂取する食品添加物のはるかに高濃度の量に当たります。どんな物質でも極端に多量摂取すれば必ず何らかの毒性が認められるものだ。このような大量投与による毒性試験の結果が私達の食生活レベルで現れるとは考えられません。
 必要な毒性試験の範囲は、評価対象の食品添加物の種類、性質により異なる。最終食品に残留しない製造用剤や、食品に常在する成分で、食品添加物としての使用料がわずかで食品常在量を大きく変化させないもの等では、慢性毒性試験は必要としないことがあります。